心臓リハビリテーションのまにまに

心臓リハビリテーションを10年以上している心リハ太郎が日々考えたり思ったりしているエビデンスのあることないことをつらつらと書いています。

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行動変容のステージモデル(無関心期編)

前回の導入編では行動変容のステージモデルについて、5つのステージからできていること、患者さんの心理的変化を捉えられることが特徴であることをお話ししました。
ここからはステージ毎にそれぞれの特徴と考え方について述べていきます。

無関心期(前熟考期)の特徴

無関心期は前熟考期とも言われます。
ある行動をするかどうかについてほとんど考えることもない、または、するつもりがないという状態です。

無関心期の中には、なぜその行動が重要なのかの理由を知らないという場合があり、重要性について説明すれば無関心期から抜け出す人もいます。

また、病気についての説明を十分に受けておらず、説明不足による不安や不満、怒りなどにより、話が耳に入っていかないというケースもあります。
このケースは患者さんの知的能力が高いことも多く、その場合は専門的かつ分かりやすい説明が重要になります。
医療者の専門性や説明能力の高さが求められますが、病気やこれからの治療方針について、患者さんの思いも受け止めつつしっかりと説明し、理解してもらいながら同意を得ていくことで不安や怒りが解消し、無関心期を脱することもあります。

ただ、それ以外の無関心期の人は、そもそも行動を変えるつもりがないことが多く、この場合は行動変容のステージの中では接しにくいと感じるケースが最も多くなります。

無関心期の患者さんの態度として主なものには

  • 怒り出す
  • 医療者をバカにしたような態度をとる
  • 自分には関係ないと言ったりそういう態度を見せる
  • 聞いているフリをするが話を合わせているだけ
  • 全く違う話を始めたりしてはぐらかす

などがあります。

患者さんの性格や医療者との関係性、病気についての理解度によって、上に挙げたどのパターンの態度が出てくるかは様々ですが、無関心期に共通するのは「あなたとはこの問題について真摯なコミュニケーションを取るつもりはない」ということを、言葉あるいは態度で示しているということです。
関心がありそうなフリをしている場合でも、どこか通じてない感じがある時は無関心期と思って接することが打開策になるかもしれません。

無関心期の人への関わり方

無関心期の患者さんに対する医療者の関わりでよくみられる二つのパターンは、医療者が面倒臭くなって諦めたり積極的に関わらなかったりするパターンと、相手が嫌がっている事に医療者が気付けず無理を押し通して患者さんとの関係性を壊すパターンです。

どちらも患者さんが病気について理解し、治療をしていく妨げとなる関わり方ですが、こういう関わり方をしている人が実は多いのではないでしょうか?

無関心期の人に関わる際に重要なのは、相手を理解しようとすること、またその人を無関心期であることも含めまずは許容することです。
相手を許容する際にはアドラー心理学の「課題の分離」という考え方が参考になります。


人間は自分のことを理解したいと思っている人や自分の立場になって考えてくれる人の言うことには耳を傾けようと思うものです。
つまり、無関心期は医療者側の人間力が最も試されるステージだと言えます。

人間が持つたくましさ、困難を乗り越える内的な力のことを「SOC(Sense of Coherence)と言うそうです。
SOCについてはこちらで紹介しています。


無関心期の方に向き合うことであなたの人間としての能力であるSOCが高まり、その患者さんではだめでも、次の患者さんにその経験が活かされるかもしれませんし、その患者に次に会う際に経験が活きるかもしれません。

無関心期の場合、急がば回れということわざにもあるように、まずは人間的な関係性の構築から始めることでその先に進めるケースが多いですし、自分を成長させると言う意味でもその人に向き合う姿勢を保つことは意義がありますので、諦めずに、また押し付けにならないように、関わる努力をしてみるとよいでしょう。

次回に続く