心臓リハビリテーションのまにまに

心臓リハビリテーションを10年以上している心リハ太郎が日々考えたり思ったりしているエビデンスのあることないことをつらつらと書いています。

スポンサーリンク

自己コントロール感の重要性について

f:id:shinrihataro:20170321190549j:image

こんにちは、心リハ太郎です。

日経ビジネスオンラインに面白い記事が載っていました。

「残業規制100時間」で過労死合法化へ進む日本:日経ビジネスオンライン

面白い記事なので是非本文を読んでみていただきたいですが、記事の中に心臓リハビリテーションに関連しそうなエッセンスがありましたので紹介します。

 

トップは長生きする

「なぜ、トップは長生きなのか?」

 そのメカニズムを解明するために1985年に始まったのが、冠状動脈疾患疫学の医師でもあるロンドン大学のM.マーモット教授らの第2期ホワイト・ホール・スタディー。そこで明らかになった一つのカギが、「自分の人生・暮らしを自分でコントロールすることができるかどうか」。つまり、トップが長生きする謎は、彼らが持つ「裁量権にある」としたのである。

トップは裁量権を持ち自己決定権が広いために長生きをするのだというなかなかエキサイティングな話です。

自分の人生や暮らしという部分には、心臓病後の方であれば病気の管理も含まれます。また病気の以外のものも病前から引き続き存在しています。

この研究をもとに考えると、心筋梗塞などの心臓病になる人は、自分の人生に対する裁量権が狭い人が多いのかもしれないということです。

ただ個人的には「自分の人生・暮らしを自分でコントロールすることができると思うかどうか」が寿命に関係する、という表現のほうがしっくりきます。

自己コントロール感とは

自分のことや自分の周囲のことを自らがコントロールできると思うかどうかの感覚、これを「自己コントロール感」といいます。

自己コントロール感とストレス

この自己コントロール感は、人間の精神面、特にストレス対処にとってすごく大事なものです。

最後に「感」とついているのは、ストレッサー(ストレスの原因になるもの)を実際にコントロールできるかどうかではなく、コントロールできると感じているかどうかが重要だからです。人間にとっては、実際がどうかよりも、自分がどう思うかの方が実は大事なんですね。

文科省のサイトにストレス対処についてまとめられた良いページがあったのでリンクを貼っておきます。

第2章 心のケア 各論:文部科学省

また、この辺りはアドラー心理学が分かりやすく示してくれていると思いますので、興味のある方は是非ご一読することをおすすめします。

 

自己コントロール感は本人の認知によるところが大きい 

心臓病の発症にはうつ状態が関係するというエビデンスは多数ありますが、大元をたどれば、この自己コントロール感が感じられない状況(家庭、会社、友人関係など)にあると本人が認知していることが一つの大きな問題のはずです。

これは心臓病になる前からあるものなので、病気の治療だけではどうにもなりません。

これを理解し、解決方向に持っていくためにはリハビリテーションの概念により広い視点で患者さんを捉えることが大事です。

もし臨床心理士がいる場合は相談してみることも一案と思いますし、人間の認知の重要性について勉強してみるのもよいかと思います。 

認知とは、認知症のことではなく、自分や他人、世界をどのように捉えているかということです。

認知行動療法について勉強すると、人間とは事実ではなく自分の認知に基づき行動しているということが理解できます。

自己コントロール感とは、自分が自分の人生や環境をコントロールできると思えるかどうかなので、まさしくこの認知の一つになります。

自己コントロール感を感じさせる関わり方ができているか

患者さんが病気に対する自己コントロール感を感じているかどうかを確かめて、感じていない場合はどうしたらよいかを是非考えてみて下さい。 

自己コントロール感が感じられないとは、例えば毎日服薬できる自信がないとか、毎日ウォーキングできる自信がないとかです。 

医療者によくあるのは、患者さんにやるべきことばかりを網羅的に伝えて満足し、患者さん本人ができそうと思うかどうか、つまり自己コントロール感を持てているかどうかを無視してしまっているというケースです。

自己コントロール感を高められないような関わり方(疾病管理指導など)をしている場合、どれだけやっても有効なものとなっていない可能性があります。

下手をすると、正論ばかり述べ立てることで相手の自己コントロール感を失わせることしかしていないかもしれません。

みなさんも自分の努力ではなんともならないと感じていることを思い浮かべてみて下さい。例えば上司が困った人だとか、給料がなかなか上がらないとか、それこそが自己コントロール感の少ない状態です。

自己コントロール感改善のポイントは、できそうもない、変えられそうもないと思う部分に目を向けるのではなく、自分の身の回りの変えられそうと思える部分に目を向けることです。

変えられそうもないと思うことの多くは、他人の感情や考え方、行動であったり、自分の周りの環境や物理的制約、経済的制約などです。

特に人からどう思われるかとか、人と比べて私は情けないとか、他人を基準にした考え方をする人は、自己コントロール感がとても低い場合が多いように思います。

こういったことばかりに目を向けてしまう人は、なかなか広い視点で解決策を考え付くことができませんので、実はこういう良い部分があるとか、ここは変えられそうなんじゃないかなど、客観的な視点でその人の問題を一緒に考えてあげることは1つの解決策になるかもしれません。

その際には上で紹介した、アドラーの「これからどうするか」という視点があることに患者さんが気づけるような関わり方をしてみると何かの突破口になることがありますので、是非試してみて下さい。

最後に

この記事では自己コントロール感について説明しました。

引用紹介した記事の中には、医師・看護師の夜勤を含む長時間勤務が脳血管疾患や心疾患のリスクを数倍に高める、などの話も紹介されていますので、是非そちらもご一読いただき、非人間的な労働環境の改善についても考えていただけるとよいかと思います(そちらが引用先の記事の本題です(^^;))

 

※言わずもがなですが、私個人の意見ですので絶対にこれが正しいというものではありません。