心臓リハビリテーションのまにまに

心臓リハビリテーションについて考えたり思ったりしていることをつらつらと書いています。

超高齢化時代の退職への備え(身体編)

心リハ太郎です。

このブログを読むような方々は普段高齢者の方と接することが多いと思いますが、目の前にいる患者さんをみながら自分の老後と重ね合わせたことがありますか?

今後の日本の人口構成は未曾有の変化を迎えます。1950年には退職者1人あたり10.0人の労働者がいました。

つまり10人で高齢者1人の生活を補助していたわけです。

しかしこの退職者と労働者の比率は現在(2017年)の13年後、つまり2030年には1.8人、33年後の2050年には1.3人まで減少するという予想もあるのです。

我々が高齢者になるころには若い世代からの社会保障費や年金による生活の押し上げはほとんど期待できなくなるかもしれません。

おそらく望むと望まざるとに関わらず、退職年齢は今後の65歳、70歳と引き上げられるはずです。そうでなければ、生活を維持できなくなる人が激増するからです。

しかし、その時に働ける肉体、精神機能を持っていなければ必然的に苦しい生活を送ることになるかもしれません。

日々、患者さんには食事に気をつけなさい、運動をしなさい、タバコをやめなさい、血圧に気をつけなさいなどと言っている方々が多いと思いますが、まず自分にその言葉を向けましょう。

もしあなたが医療者ならば、心疾患、脳血管疾患などの疾患に罹患することの怖さを知っているはずですが、なぜか自分は大丈夫と思うのが人間の不思議なところです。

自分の生活維持のために、できるだけ長く働きたいと思った時にそれが叶わないことは大きなリスクなのです。

目の前にいる患者さんは将来のあなたかもしれません。

本当は病気になっても安心して暮らせる社会を作ることができればそれに越したことはないのですが、現状はそうはなっていない以上、自分でできることはやっておくほうがよいでしょう。

ではでは。

出産後に仕事を辞めないほうがいいかもしれない

女性が妊娠出産を機に仕事をやめると2億円以上の生涯賃金を失うそうです。

出産で仕事をやめると2億5000万円を失う | 花輪陽子の「赤ちゃんと私のハッピーマネー日記」 | 日経DUAL

 出産で仕事をやめると、2億5000万円もの生涯賃金を失うことをご存じでしょうか。

 「国民生活白書」によれば、大卒女性が仕事を中断することなく、38年間働き続けた場合の生涯賃金は退職金込みで約2億7700万円です。育児休業を2年間取得して36年間働く場合、失うお金は約1900万円と比較的少なく済み、生涯賃金は約2億5800万円となります。(2005年(平成17年)版、第3章「子育てにかかる費用と時間」より。)

 一方、出産後退職をして8年間のブランクを経て再就職する場合、正社員として復帰するケースの生涯賃金は約1億7700万円、パートとして復帰するケースの生涯賃金は約4900万円になります。結婚後は専業主婦という場合の生涯賃金は約2200万円と、ずっと働き続ける場合と比べると2億5000万円ものお金を失うことになります。(「国民生活白書」2005年(平成17年)版。28歳で第1子出産、31歳で第2子出産と仮定)

上のデータは大卒の場合なので少し金額は大げさになるかもしれませんが、医療に関わる職種は女性でも正規職員であれば一般男性並みの給与を得られるケースも多いです。

しかし、看護師、理学療法士などが妊娠や出産を機に仕事を辞めるケースをよく見かけます。

男性の収入が昔ほど上がらないことの多い現代では、子育て後にパートや非正規職員に復帰すればいいやって感じで漠然と辞めてしまうのではなく、金銭面の意外なデメリットも知った上で仕事を辞めるか続けるかを選択するのがよいのではないかと思います。

夫婦で貯める1億円!

 

女性の就労構造の変化などについてはこの本が詳しくて面白いです。

現代ではいかに男性が稼げなくなっているかということがわかります。女性は結婚に夢を見ず、男性と共に歩む覚悟を決めたほうがよいでしょう。

 ではでは。

心拍数が上がっているときは

なんかいつもより患者さんの心拍数が高いなーって時がありますよね。

これをどう思いますか?

心拍数は自律神経のバランスを反映する

心拍数は交感神経によって速くなり、副交感神経によって遅くなるよう調節されています。

交感神経はエサ取り神経と言われていて、動物が獲物を捕まえるために身体を動かすときに優位に働きます。

つまり交感神経の働きが強い時は身体はどちらかといえば興奮状態にあるということで、心拍数が上がり、末梢血管が締まり、もし獲物を捕まえるために怪我をしたら血がすぐ止まるよう血液が固まりやすくなります。

副交感神経は交感神経を抑えるような働き方をします。交感神経にブレーキをかけているイメージですね。

逆にいえば患者さんの心拍数が高いとき、手が冷たいときというのは副交感神経によるブレーキがゆるみ、交感神経が優勢に働いているということです。

心拍数が高い時に何を考えるか

心拍数が高いということは、身体をわざわざ興奮状態にしておかなければならない何かの要因が潜んでいる場合があります。

例えば

  1. 脱水傾向
  2. 発熱や炎症
  3. 心拍出量(主に一回拍出量)の低下
  4. 貧血
  5. 精神的ストレス

などです。

これらはどれも治療の邪魔になって病気の回復を遅らせたり、離床や運動療法に悪影響を及ぼしたりするものばかりです。

脱水のときは循環血液量が減るために心拍数を速くすることで全身への血液配給量を保たせようとします。

貧血の時は運ばれる酸素量が少なくなるのでやはり心拍数を速くすることで全身への酸素配給量を保たせようとします。

いくつかの因子が複合している場合もあります。発熱で発汗が進み水もあまり飲めずに脱水が進むとか、ガンの出血があって炎症もあり貧血も進むとかです。

このように心拍数を上げなければいけない状態が続いた結果、心不全のような心臓の機能が落ちている人は心臓を休めたいのに休まらない状態が続くことになり、心不全が増悪することにも繋がります。

心拍数が上がっているときは、なぜだろう?って考えてみてください。その原因の改善が患者さんの治療効果を上げ、色々なことがうまく回り始めるきっかけになるかもしれませんよ。

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 ではでは。

 

医療においては人工知能の成長コストは大きな問題にならない

人工知能(AI)が未知の環境であっても対処できるようになるためにはかなりのコストがかかるようです。

ポナンザの「守破離」|人工知能はどのようにして「名人」を超えるのか?|山本一成|cakes(ケイクス)

 ポナンザの場合は、合計で300コアになるマシン数台を何か月も動かし続けて、少しずつ少しずつ強くしていきました。このやり方ですと、電気代も毎月、数十万円以上かかります(これはもちろん個人ではまかなえませんので、さくらインターネットさんの支援を受けています)。

 人工知能の開発は、もはやそのレベルのリソースがなければ、勝負の場に立つことも難しいのです。

 つまり、AIの開発が進むのは高い収益性の見込める分野からであるということを意味しています。

人工知能はどのようにして 「名人」を超えたのか?―――最強の将棋AIポナンザの開発者が教える機械学習・深層学習・強化学習の本質

医療はAI開発における狙い目の一つ

医療(特に診断)は基本的に高い収益性が見込める分野になります。

それは医師の平均年収が一般よりも非常に高いことからも分かります。

このことから、医療分野においてはAIによる診断能力が人間による診断能力を上回るまでの年数が、皆の思っている以上に短い可能性があると考えられます。

あっという間にAIの時代がくるかも

囲碁の世界でAIがトッププロを追い越すまでにかかった時間が想定よりもはるかに短かったことを考えると、もしかすると10年以内に起きることかもしれません。

少なくとも現在カルテ診ばかりしている医師はAIとの競争が起きた場合、生き残れない可能性があります。

また、画像による判断はディープラーニングの最も得意とするところであり、画像診断を専門としている職種も淘汰される可能性があります(AIを導入できる資本を持った大病院ほどその可能性は高いかもしれません)。

逆に複数の分野にまたがる情報を統合することなどはディープラーニングではまだ調整が難しいかもしれません。

あるいは、人間の気持ちや感情を推し量りながら会話するなど、生身の人間を相手にすることも不得意と思われます。

ですのでカウンセリング、行動変容などの対人的関わりはもうしばらく人間の舞台になると思われます(逆に投資のアドバイザーなど自分の感情を入れずにアドバイスを行う業務はコンピュータのほうが得意でしょう)。

自分の専門性がコンピュータに追い越されないようなものなのかどうか、現状のAI技術についてしっかり把握した上で、よく考えてみるのがよいのではないでしょうか。

 

 

 

研究発表について(その2)

前回からの続き

研究発表について(その1) - 心臓リハビリテーションのまにまに

 

学会などの研究発表で一番大事なこととは何かについて、以前こんなことを書きました。

【関連記事】学会発表で大事なこと - 心臓リハビリテーションのまにまに

研究発表とは本質的にはコミュニケーションであるという話でした。

コミュニケーションであるということは、相手がいるということです。これ、すごく大事なことです。

話の目的をはっきりさせよう

相手に何かを伝えたい場合、うまく理解してもらうために必要なこととは何でしょうか。

それは自分の話の目的をはっきりさせることです。

目的がはっきりしていないと中身がグズグズになり、何も伝わらない発表になります。

もし、あなたが他人に自分の研究の目的を一言で説明できない場合、自分自身が何をやっているかわからずにいることがほとんどです。

何を話したいのか説明できない人の話は、どれだけ聞いても結局何も分かりません。

研究ではミステリーツアーはダメ

一言で目的を説明できない研究は旅行に例えれば目的地も決めずにぶらり旅をしてるようなもんです。

今日は大阪、明日は四国、明後日は気の向くままに行こう、ってのはひとり旅の場合は楽しいかもしれませんが、もし同行者がいたら、「いい加減にしてよ!どこに行くつもりなんだよ!」って愛想を尽かされかねません。

他人と旅をする場合、よほどの相手かミステリーツアーでもなければ目的地を決めて出発するのが普通でしょう。

研究発表でも目的地のわからない発表を聞かされるのは聞かされるほうにとってたまったもんじゃありません。

なので、「どこに行く旅なのか?」、つまり「何を調べたい研究なのか?」をはっきりさせて下さい。

また、同じ札幌に行くのでも、美味しいものを食べに行くのと観光地巡りをするのでは違いますよね。

本場のジンギスカンを食べに行くツアーと札幌時計台を見に行くツアーでは恐らく参加者も変わります。

なので「この旅へ参加するとどんないいことがあるのか?」、つまり「この研究をする意義は何なのか?」もはっきりさせておきましょう。

 

まとめ

まずは研究を始める前に、自分に問いかけてみて下さい。

この研究は何を調べたい研究なんだ?(どこに行く旅なんだ?)」

何の意義があってこの研究をするんだ?(どんないいことがあるんだ?)」と。

この2つの質問に一つの文で短く明確に答えられたときには、あなたの研究の目的が自分でも理解できているはずだと思います。

 

次回は具体的な例をもとに研究目的を明確にするプロセスをお伝えする予定です。


【関連記事】
EZRは素晴らしい統計ソフト - 心臓リハビリテーションのまにまに

研究発表について(その1)

学会で発表をすることになって多くの人が最初に当たる壁は統計がわからないとかそういうことだと思います。

t検定とはなんぞや、とか、有意差ってなんじゃらほいとかいう感じです。

もう少し詳しい人でもどんな検定手法を使えばいいのとかいう感じなんじゃないかと思います。

大学院にいたり、職場に詳しい人がいる場合は別として、普通はよくわかんないもんです。

なので適当にエクセルで相関係数を出してみたり、運良くSPSSとかの統計ソフトが使える環境にある人はt検定をかけてみたりして、なんかよくわからないけどまあ発表してみよう、みたいな流れになるんじゃないでしょうか。

でも、本当はこういう流れはダメなパターンです。研究で一番大事なのは統計について理解しているとかそういうことじゃないからです。

でも初めはそれすらもわからんので仕方ないんですが。

大体このような流れで発表すると、グズグズのポスターとかスライドが出来上がり、「何がしたかったんですか?」という質問がきて「・・・。」となり何も答えられないまま終わるか、しどろもどろに答えるけど何を言ってるか自分でもわからないという結果に終わります。

まあ、ひと夏の想い出作りみたいな学会発表でいいって人は別として、せっかくやるなら何かしら得るものがあるような発表にしてみましょう。

このシリーズではそのヒントになりそうなことを色々と書いていきたいなと思っています。

 

その2に続く

研究発表について(その2) - 心臓リハビリテーションのまにまに

 

【関連記事】

学会発表で大事なこと - 心臓リハビリテーションのまにまに

EZRは素晴らしい統計ソフト - 心臓リハビリテーションのまにまに

 

 

心臓リハビリテーションとは(その5)

前回からの続き

心臓リハビリテーションとは(その4) - 心臓リハビリテーションのまにまに

 

前回のお話は、心臓病の発症とは患者さんにとってかなり大きなライフイベントであり、患者さんの視点からも医療者の視点からも軽視すべきではない、しかし同時に患者さんが入院中に心臓病になったことを受容することも難しいのだという内容でした。

今回は「コンコーダンス」という概念を心臓リハビリテーションに取り入れるという考え方についてです。

入院短縮化の弊害

最近の入院短期化傾向で、医療者は以前ほど患者さんとのコミュニケーションにしっかりと時間を使えないことが増えてきました。

患者さんにとっては入院中に病気を受容するための時間的余裕がなくなっているのではないかと思います。

このように医療者、患者さんの双方に精神的・時間的余裕のない状況下では、ついつい詰め込み型の説明や教育がされてしまうものです。患者さんが理解していようがしていまいがお構いなく情報だけ伝えておしまい、というやつです。

コンコーダンスとは

しかし、前回お話したように、患者さんが病気になったことを受け入れているかどうかは、その後の治療を左右する重要なカギになります。

【参考記事】心臓リハビリテーションとは(その4) - 心臓リハビリテーションのまにまに

つまり、急性期入院中に医療者が目指すべきは患者さんが病気を受容してこれからの治療に前向きになれるような手助けや情報提供をしていくことであり、それにより患者さんが積極的に治療に関わっていく気持ちになるのです。

 

この考え方を一言で言い表す言葉が「コンコーダンス」です。

コンコーダンス【いまさら聞けない看護用語・略語】 | ナースハッピーライフ

コンコーダンスとは、「患者を尊重し、医師と患者が一緒になって治療方針の合意に至るプロセス」という薬物治療の考え方です。病気について十分な知識を持った患者が疾病管理にパートナーとして参加し、医師と患者が治療を共同作業として行なう過程を意味します。

コンコーダンス医療では、医療者は患者を指導するだけでなく、パートナーとなり、共に病気に立ち向かっていくことが重要です。そのため、医師や薬剤師にはコミュニケーションスキルの向上も求められるでしょう。

患者さんに権利と責任を委譲する

これまでの医療で使われていたコンプライアンスとかアドヒアランスなどの言葉からわかるように、患者さんは言われた治療に協力的なのが当たり前、言うことを聞いて当たり前、という傲慢な考え方が主流でした。

口では患者さんが中心と言いながら、患者さん当人は治療の意思決定をするチームの一員とは考えられていなかった訳です。

ですので患者さんもどこか自分の治療なのだという思いが薄く、適切な行動をとれなくなることが多かったのではないでしょうか。

一方、コンコーダンスという言葉は、患者さんがチームの一員として専門家のアドバイスを聞きながら自分で選択できる権利を得るとともに自分の治療に対する責任を持つことを指します。

コンコーダンスとは自分の人生を自分で選ぶという基本的人権に根ざした言葉なのです。

このコンコーダンスという概念が医療者に、そして患者さんに広まれば、まさしくそれが広い意味での心臓リハビリテーションと言えるのではないかと思います。

薬物治療分野のみでなく、医療界全体に広がってほしい考え方です。

まとめ

この項の最後に急性期における心臓リハビリテーションの目的をまとめます。

  1. まずは患者さんの命を救い、またできる限り軽症かつ日常生活に支障がないような状態に留める(身体面)
  2. 患者さんが病気を受容し、これからの治療に前向きになれるような手助けをする(精神面)
  3. できる限りもとの生活へ復帰してもらう(社会面)
  4. 以上の3点を行う上で、患者さんが意思決定をする権利をできる限り尊重するように考え、また働きかける(コンコーダンス

ここではリハビリ職種だけでなく、医師、看護師、薬剤師、管理栄養士、ソーシャルワーカーなど多様な職種が自らの職務を全うしつつ、相互協力することが重要です。

できることなら患者さん本人も治療の主体として各職種と協力して自らの治療を行なっていけることが理想となります。

 

※言わずもがなですが、これは私個人の考え方であり、必ずしもこれが正しいというものではありません。